
さて、前回のコラムで『相続土地国庫帰属制度』について紹介したが、今回は相続土地国庫帰属制度に関する注意点を挙げて行こうと思う。
結論から言うと
1に『金』
2に『条件が厳しい』
3に『時間』がかかる
4にやっぱり『金』となる。
中々世知辛い話であるがある意味現実に即した話なので避けることはできない。
【1に『金』について】
さて、この相続土地国庫帰属制度は費用がかかると言うことをまずは知ってもらわなければならない。
もっと言えば『土地を手放す』側が費用を支払うのである。
ここで多くの人が首を傾げることになる。その疑問は「え?土地を譲る方が金払うの!?」だと思う。
結論から言えば「そうです」となるわけであるが、この『相続土地国庫帰属制度』は土地売買とは明確に異なる制度である事を絶対に忘れてはいけないのである。
では一体いくらかかるのか?
1,負担金は原則『20万円』
※要件次第で加算される場合あり
2,申請手数料『1万4000円』
3,調査費用
と中々かかる。3の調査費用に対しては『?』と思うかも知れないが、これは現地の状況を把握する必要があるため現場に一度は足を運ばなければならない可能性が高いのである。その旅費だと思って欲しい。
そう無料ではないのである。
【2に『条件が厳しい』】
次は条件面についてである。
この『相続土地国庫帰属制度』を利用するのは実は中々ハードルが高い。
『法務省HP 相続土地国庫帰属制度について』参照
法務省のHPで公開されている参考資料を見るとその条件の厳しさがわかる。
①建物があるとダメ
②土地に何らかの権利があるとダメ
③誰かが土地を利用しているとダメ
④有害物質で汚染されている土地はダメ
⑤トラブルがある土地はダメ
というものであり、要約すると『管理が面倒な土地はダメ』ということになる。
まぁ、国の立場からすれば面倒な土地を引き受けて『やろう』という感覚なのだろうから引き受ける土地の面倒事までは引き受けるつもりはないのが本音なのだろう。
その気持ちは理解出来るのだが、相続土地国庫帰属制度の目的を考えると少々疑問が残る。
【相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律】
第一条 この法律は、社会経済情勢の変化に伴い所有者不明土地(相当な努力を払ってもなおその所有者の全部又は一部を確知することができない土地をいう。)が増加していることに鑑み、相続又は遺贈(相続人に対する遺贈に限る。)(以下「相続等」という。)により土地の所有権又は共有持分を取得した者等がその土地の所有権を国庫に帰属させることができる制度を創設し、もって所有者不明土地の発生の抑制を図ることを目的とする。
この制度の根拠法の1条にあるように『所有者不明土地の発生の抑制を図る』事が目的なのだから、条件の厳しさは根拠法の目的に反している気がするのである。
この制度の条件で厳しいなと思ったのは『笹があるので国庫帰属できない』という弁護士先生のpポストを見たことである。
いや、笹で駄目なのかよというのが正直な感想であった。
国庫帰属の承認のハードルは中々高いと言える。
【3に『時間』がかかる】
この時間がかかるというのは国庫帰属を願い出てから審査期間というものが存在する事を意味しているのだが、その期間であるが『半年から1年』という長い審査期間が設けられている。
正直な話、半年?1年?と衝撃を受けた方もおられるだろう。だが、上記にあるようにこの国庫帰属制度は徹底的にトラブルを避けているので、この審査期間の長さは想定しておかなければならない。
それに加えて例えば土地上に建物があった場合にはそれを解体したりするなどの色々な条件を整えるための時間がかかることを意味している。
それを考えれば国庫に帰属させるには『年単位』の時間がかかることを想定しておかなければならないのは間違いない。
【4にやっぱり『金』となる】
さて、最後にまた『金』の話になるのだが、堪えてほしい。
『条件が厳しい』という趣旨のことを前述したが、やはり本題はそこで条件を整えるために建物を解体したり、隣地との境界を画定するために土地家屋調査士の先生に依頼したり、崖があった場合には公示を行ったりするなどの国庫に帰属させるために条件を整えるとしてものすごく費用がかかるのだ。
今あげた例でなくても、例えば車が放置してあったりしたらそれを適正に処分するというのは、建物解体などに比べれば費用や手間はそれほどないかも知れないがそれでも相当な額の費用がかかるのは容易に想像できるというものだ。
そして、国庫に帰属したからといってそれで終わりとは言えない。
もし、後々トラブルの種が見つかった場合は国から損害賠償を求められる可能性があるのだ。
そう、この制度は中々『シビアな金問題』を含んでいる制度であるのだ。
このように書くとこの相続土地国庫帰属制度なんか利用しない方がマシと考える人がいるかもしれないのだが、それは早計と言えるだろう。
この制度は始まったばかりであり、現在は国が責任を負わない事を念頭に置いたバランスの悪い精度であると私は思う。だが、それでは利用者がほとんどいないことになり、この制度自体が崩壊してしまうだろう。そのために数年のうちに見直しが行われバランスのとれた制度へと修正されていくはずである。
この相続土地国庫帰属制度に課題はあるがそれでも害悪な制度ではないので、今後の修正により国民の側に立った制度になると思っている。